金光男 個展 『BREAK』– Artist Interview

2026年10月13日



Artist Statement|

あの頃は、よく眠りました。本当によく眠ったことを、今でも覚えています。

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BALCのディレクター、リキさんのお誘いで、十数年分の作品をお見せできることになりました。この十数年は、私の生活も世界も大きく変わった時間でした。


2012年に作家としてデビューして以来、技法は変わっていません。ワックスの上にシルクスクリーンでモチーフをプリントし、それを熱で変容させる、私のオリジナルの技法です。

会場で過去の作品を見返し、髪を梳いた櫛、毛布、タオルなど、自分の体に触れ、身体を分けたような存在を多く扱ってきたことに気づきました。

2014年ごろの私は、アイデンティティやルーツを直接には語らず、それを遠回しに匂わせるような作品をつくっていました。自分の在り方や表現の方向に苦悩していた時期です。東日本大震災以降、SNSが身近になる一方で、自分のルーツやマイノリティに対するヘイトが、現実世界にも漏れ出していきました。私はそれにうまく応えられず、少しずつ制作の手を止めていきました。


2017年、結婚を機に京都から三重県へ移住し、2019年に子どもが生まれました。制作の手を止めていた自分を恥じ、制作を続ける姿を息子に見せようと、活動の再開を決意しました。
その翌年、唯一存命だった祖母が他界しました。韓国のチェジュ島で起こった済州4.3事件から逃れるため幼い私の母を連れ日本に渡ってきた祖母でした。祖母の他界が避けてきたアイデンティティやルーツに向き合うきっかけとなり、モノクロームで続けてきた作品から、カラーを扱う転機として、2021年に展示を行いました。
同じ技法で十数年活動してきましたが、生活や世界が変わるにつれ、モチーフの意味も、色の意味も、少しずつ変わってきました。何気ないものたちが、多くの意味を帯びてくるようになったのだと思います。


最後に、今回のメインビジュアルになっている、2022年の作品《Break》についてお話しします。ベッドに光が差している一枚の写真で、私にとって、とても大切な作品です。
ベッドは、休息の場であり、愛し合う場でもあります。壊れた心や悲しみが染み込む場所であり、誕生の場でありながら、死もそこにある。私にとってベッドは、そのようなモチーフです。
ただ、現在のベッドは、安らかに死を待つ場所ではなくなっているように思います。世界で行われているジェノサイドの報せを目にするたびに、ベッドという場所の意味が、私の中で変わっていきました。安らかに眠り、安らかに死を迎えるという前提が、失われている人々がいます。

私は、ジェノサイドに反対します。
《Break》に、この暴力を断ち切る願いを込めます。
すべての人が、安らかに眠れる世界を願います。

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あの頃は、よく眠りました。よく、眠れました。