SOONJAE個展 『YUME NO KIROKU / ゆめのきろく』– Artist Interview

2026年3月27日



Artist Statement|

作品を見つめていると、そこには作者の人や世界観、
価値観が「痕跡」として残っていることに気づく。
私の制作は、その痕跡をらの⼿でつくり出し、
作品の内部に「私」をどのように運び込むかという問いから始まっている。

その参照点となったのが洞窟壁画である。
最も原初的な記録のひとつである洞窟壁画、とりわけ形の壁画は、何かを描写した像ではなく、
身体そのものを壁に押し当てて「⼰」を刻み込む⾏為だった。
私はこの感覚を出発点に、指紋と掌紋を制作の核として扱っている。

指紋と掌紋は、個を識別する固有性であると同時に、東を越えて受け継がれてきた普遍性を持つ。
そこには自然の流れを思わせる線の運動があり、誰もが身の身体のなかにそれを宿している。
私が扱いたいのは、この「固有」と「普遍」が同時に存在する地点である。

制作は、木炭によるスケッチから立ち上がる。
自然素材である木炭が残す痕跡に、墨で湿らせた布の滲みを重ね、線の厚みと呼吸を増幅させる。
アスファルトや壁を引っかくで落書きしていた幼少期の感覚は、私の身体に残る制作の原風景であり、
同時に私が属してきた文化圏の感覚を呼び戻す装置でもある。

私はモルタル、接着剤、セメントを配合したメディウムによって
洞窟の壁を思わせるテクスチャーをつくり、その上に絵具を積層する。
あるいはメディウムに依存せず、絵具を薄く溶いて布へ滲ませる。
積層と浸透、表面と内部、現れるものと吸い込まれるもの——相反する状態を同の画
面に共存させることが、私にとって「⾃⼰」を扱う方法になる。

色は、日々の⽣活から採取される。
ただ流れていく日常ではなく、微細な差異によって「今」が毎瞬更新されていく感覚——その積み重ねとしてのから色を汲み上げる。
目を閉じているとき、眠りのなかで感じられる色もまた、私にとっては現実の部であ
り、制作へと接続される。居住という時間の区分を通してえてくるのは、私一人の色だけではない。
家族、都市、国家から受けた影響が織り込まれ、文化的アイデンティティとしての色が立ち上がってくる。

時間から得た色鑑賞者にも、それぞれの感覚と言語で作品と出会い、その時間をは、
次の時間を確保するための努へと変わり、その努によって得た時間は、再び色となって制作へ戻ってくる。
私の制作は、この循環のなかで更新され続け、そこに「私」をす新しい色が蓄積され
ていく。

私の絵画は、アイデンティティへ向かうプロセス全体を記録する「夢」のような装置である。
私にとって夢とは、睡眠のなかの幻想に限定されない。制作、生活、ロマン、自由、美、芸術、アイデンティティ——名は異なっても、それらは同じ本質を共有していると信じている。
そこでは過去・現在・未来が同時に息づき、結として閉じるのではなく、反復され、更新され続ける。

鑑賞者それぞれの感覚と言葉で作品と出会い、その時間を由に引き受けてほしい。
その出会いが、もうひとつの夢へと接続されていくことを期待している。