
橋本 唯瑶 個展 『GAZE』– Artist Interview
2026年9月5日
Artist Statement|
私は、日常生活の中で目にしたものをモチーフに絵画作品を制作している。
生活の中で何気なく目にする物に対して、ふと引っかかりを覚え、数秒間視線でなぞってしまうことがある。例えば醤油がかかった豆腐、マーガリンの凹凸、ハンカチの水玉模様。その色や形、質感、重さといった要素が、改めて見つめると新鮮な存在として立ち現れる。その瞬間の感覚を私は「ゆるい緊張感」と捉え、絵画として描き起こしている。
制作では、モチーフの細部を省略したり、拡大や簡略化を行ったりしながら、描写の密度のバランスを探り、その対象が持つ固有の緊張感を引き出すことを試みている。
支持体には粒子の粗いジェッソをローラーで何層にも重ね、画面に細かな凹凸をつくる。その上から薄く溶いた絵具を幾度も重ねることで、筆致をほとんど残さず、画面全体に均質に手を加えたオーバーオールな絵肌を生み出している。このような描画によって、特定の箇所へ過度に視線を誘導しない画面を目指している。また近年は、同一のモチーフや構図による作品を複数制作し、一部分にわずかな差異を持たせて展示することが多い。複数の作品を見比べることで、私自身が感じる「ゆるい緊張感」がより強く立ち上がるような展示空間を構成している。
作品に明確なメッセージを込めることを目的としているわけではない。作品を通して私が身の回りのものをどのように見つめ、どのような感覚を抱いているのか、その視点や感覚が鑑賞者に伝わればよいと考えている。